カシノナガキクイムシによる「ナラ枯れ」被害が増えています。「森林の多面的機能」が損なわれないよう山との関わりを強めましょう!
平成26年度(2014年)、「ナラ枯れ」被害防止PT(座長:竹田光廣さん)が発見した箕面の山の「枯死木」は、8月20日現在で132本となりました。(4/30:2本、6月:5本、7月:34本、8月91本)
被害が増えており、昨年の枯死木の本数152本を大きく超えそうな状況です。(過去の枯死木は、平成23年(2011年):19本、平成24年(2012年):32本、平成25年(2013年)は152本)
箕面では、市民と行政の「協働」により、被害の急拡大は一定程度、抑えられていましたが、今年は過去にないほどの多くの被害が発生しています。
今年発見された被害木396本(枯死木、及び被害を受けても現在枯れていない生存木)の内、胸高直径や樹種が記録されている390本(枯死木123本。生存木267本)については下記の通りです。
1、枯死木の樹種別本数・・・コナラ112本(構成比91%)、アラカシ5本(4%)、アベマキ2本(2%)、クヌギ4本(3%)
*コナラが、圧倒的に多く枯死しています。
2、枯死木の胸高直径別本数・・・10~19cm9本(構成比7%)、20~29cm31本(25%)、30~39cm40本(33%)、40~49cm21本(17%)、50~59cm17本(14%)、60cm以上5本(4%)
*20cm~39cm台のコナラが多く枯死していますが、40cm以上の大径木も多く枯死しています。
3、生存木(被害を受けても現在枯れていない木)の胸高直径別本数・・・10~19cm29本(構成比11%)、20~29cm99本(37%)、30~39cm83本(31%)、40~49cm40本(15%)、50~59cm10本(4%)、60cm以上6本(2%)
被害木(枯死木&生存木)の胸高直径別の本数をグラフにすると下記のようになります。
被害木を100として、枯死木の割合を出すと下記のようになります。
*枯死率=枯死木の本数/被害木の総数
1、直径10~29cm・・・枯死率24%
2、直径30~49cm・・・枯死率33%
3、直径50cm以上・・・枯死率58%
カシノナガキクイムシのアタックを受けても、樹液を出すなどで生き残っていく可能性は、概ね大径木(老齢木)では少なく、小径木(若い木)では多いようです。
昔は薪炭木として利用されていた里山が放置され、コナラなどが大径木(老齢)化し、被害の拡大に拍車をかけていると考えられます。
山なみ景観保全地域として守ってきた箕面山麓であり、できる限りナラ枯れ被害の急拡大を防ぐとともに、「森林の持つ多面的な機能」を最大限発揮できるような総合的な対策が求められています。
生物多様性には、3つのレベルがあり、生態系の多様性、種の多様性とあわせて、遺伝子の多様性があります。コナラという「種」の中で、カシノナガキクイムシの被害に強い「遺伝子」を持ったコナラを育成することなども必要かもしれません。
又、山間・山麓部の課題としては、増えすぎたニホンジカの食害により下層植生が貧弱になっており、地表面がむきだしになると、降雨時に表層土が流出する恐れもあります。「ナラ枯れ」被害により枯死木が増え、林床に光が入ったとしても、下草や幼木がシカに食べられます。「森林の持つ多面的機能」の維持のためには、総合的・多面的な対策が必要となっています。
山の麓に住む私たちの生活にも直接影響しかねない大きな課題となっています。私たちの住んでいる地域の特性を理解して、「森林の多面的機能」が損なわれないよう、山との関わりを強めましょう。