里山の環境変化、増えすぎたシカによる食害、鑑賞や園芸目的の採取などにより減少した箕面市の花「ササユリ」。求められている総合的な対策。
昭和44年に、箕面市のシンボルとなる木と花として、市の木には「イロハモミジ」、市の花には「ササユリ」が市民の投票により制定されました。
清楚・可憐なササユリ、名前の由来は、葉の形がササの葉に似ていることや、ササ原に多く生育しているために名付けられたようです。
このササユリ、薪炭林や下草の利用などで人の手が加わり、多様な生態系が保たれていた里山では普通に見られたようですが、箕面の山では、今は、ほとんど姿を消しています。
落ち葉による堆肥が化学肥料に変わり、薪や炭によるエネルギーが石油やガスなどの化石エネルギーに変わるなど、里山の経済的な価値がなくなったことや生活者のライフスタイルの変化により、里山に人の手が入らなくなり、里山の環境変化(明るい森から暗い森への遷移)により、ササユリなどの里山を象徴する植物がほとんど見られなくなりました。
生物多様性が損なわれる原因としては、このような里山の自然に対する働きかけの縮小がありますが、一方で増えすぎたシカによる食害や人間活動が自然に与える影響は多大です。
下は鉢伏山の写真(2006年12月)
2006年ごろは一面のササ原でしたが、現在はシカが嫌いなアセビなどだけが目立ち裸地状態となっています。
ササ原の中にササユリが生育していた記録がありますが、増えすぎたシカによる食害でササ原がなくなったこととあわせて、ササユリは姿を消してしまったようです。
ササユリの保護や復活を考える意味では、ここでもシカの頭数管理を進めることは避けられない課題だと考えられます。
里山に人の手が入らなくなったこと、増えすぎたシカによる食害により、個体数が減っているササユリに、あわせて、心ない人による球根の盗掘や地上部の採取など、鑑賞や園芸目的のための採取の負荷がかかると市の花であるササユリは絶滅してしまう恐れがあります。
箕面市の花であるササユリ、里山の豊かな生態系のシンボルであるササユリを次の世代に残していくために、基本的な調査/経過観察活動(現状把握)を元に、増えすぎたシカの頭数管理の徹底、森林の光環境を改善するための手入れ、違法な採取の防止や啓発など、ササユリの保護・管理のために、市民や行政などによる総合的な取り組みが必要になっているといえるでしょう。
下の写真は、6月8日に撮影(高島)したものです。
山中に自生しているササユリ
※ササ原に生育しています。
花を切られたササユリ
※追記:ササユリは環境省の指定植物であり、球根の盗掘や採取などは違法な行為です。
明治の森箕面国定公園では、環境省の指定植物として60種が指定されています。
絶滅危惧種及び希少種以外に、園芸業者、薬種業者、マニア等の採取対象となるという理由で規制されている種が27種あり、ササユリなどのユリ科やラン科の植物が多く指定されており、下記の罰則規定があります。
※明治の森箕面国定公園(特別地域)では、自然公園法第20条第3項第11号において、環境大臣が指定する植物を採取し、又は損傷する事が規制されています。 本規制に違反すると自然公園法第70条の罰則が適用され、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。