「朝日」が1面で、ナラ枯れ対策の“粘着テープ”方式を紹介-期待されるその効用
★ 新方式として注目 ★
5/18(金)付「朝日」(大阪本社版)が、1面でナラ枯れを媒介する甲虫・カシノナガキクイムシ(略称:カシナガ)捕獲専用の“粘着テープ”である「かしながホイホイ」を、写真入りで比較的大きく紹介しました。【写真・上】
これは全国的に「ナラ枯れ」が話題となっており、それへの新対策として“粘着テープ”方式に注目した記事です。
開発したアース製薬(赤穂市)が、自社の「ごきぶりホイホイ」にちなんでネーミングしました。
カシナガは約5mmの小さな虫で、毎年、初夏(6月頃)に侵入していたコナラなどから羽化した新成虫がたくさん飛び出し新たな木に移り、被害を一挙に何十倍にも広げます。
飛び出す前にこのテープを粘着面を内側にして木に巻いておくことで、カシナガの飛散を抑制するものです。
なお、このテープは物理的に虫などを粘着・捕獲するもので、農薬などは含んでいないといいます(アース製薬)。
★ 箕面では“粘着テープ”をいちはやく ★
NPO山麓委員会が5/17(木)に箕面市内で開いたナラ枯れの「研究フォーラム」でも、講演した林野庁関連の森林総合研究所の研究者が「“粘着テープ”は、有効だと思われる。今後、有効性の実証に努める必要がある」と期待を表明しました。
さらに、これに先立つ5/11(金)には、林野庁の近畿中国森林管理局が箕面の国有林で、ナラ枯れ被害を受けたものの枯死せず生存している木にこの“粘着テープ”を巻いてカシナガの飛散を抑制する試みを始めています。
こうした中、西日本を中心に各地に普及しつつあるといいます(アース製薬)。
被害を受け枯死した木については、今のところ箕面では全て伐採し殺虫剤(注)で薫蒸(くんじょう)処理されていますが、かなりの労力と技術とを必要とするため専門事業者への発注になり、1本数万円~10万円以上もかかっています。【写真・中】
(注)この薬剤は、比較的早期に分解(森林総合研究所の研究者)。
これに対し“粘着テープ”は比較的簡単に木に巻けるとともに、費用もテープ(30cm×1m)が1枚約500円(木の太さに応じて数枚を使用)で、伐採薫蒸に比べかなり安くなります。
箕面ではNPO山麓委員会がアース製薬と協力し、1年以上前からいちはやく“粘着テープ”を活用していました。
★ 重大事態を前に、“粘着テープ”をフルに ★
現在、箕面は大阪府内での“ナラ枯れの水際線(最前線)”となっていますが、国(林野庁)・大阪府・箕面市・NPO山麓委員会などが緊密に協働して「早 期発見(主に市民)& 徹底対策(主に行政)」の方針で一丸となって立ち向かっていることもあって、「今のところ、比較的効果的に対応している(大被害には至っていない)」(先 の森林総合研究所の研究者)と評価されています。
その際、市民でも割合簡単に取り扱える“粘着テープ”の効用が、かなり大きいとみられます【写真・下】。
いずれにせよ、東の高槻方面では全山に大被害が広がっており、その「火の粉」が降りかかる中で「箕面は、この1~2年が勝負」(NPO山麓委員会・高島 事務局長)といわれ、市民などの活動の中心となっているナラ枯れプロジェクト・チーム(リーダー:竹田さん/NPO山麓委員会内)では他の方式も研究しつ つ、“粘着テープ”をフルに活用する予定にしています。
【解説】処理徹底に有効か・・
従来はナラ枯れ被害が数百本以上となり全山に及ぶなど多大になると、手間や費用の面から有効な方法がなく対策を打てなくなり、それゆえ被害の伝播(伝 染)を許してきました。“粘着テープ”方式により、従来は見過ごしがちだった(見過ごさざるをえなかった)カシナガが侵入しても枯死していない生存被害木 などについても必要な場合は対応できるなど、徹底処理への可能性が高まったことになります。
【写真・上】京都でのナラ枯れ用“粘着テープ”の活用を伝える新聞(5/18付「朝日」)。
【写真・中】枯死したナラ枯れ被害木を伐採し、ビニールで覆い薬剤で薫蒸(箕面・しおんじ山で)。
【写真・下】ナラ枯れ被害木に“粘着テープ”を巻いて対応(右側の木/箕面・善福寺裏山で、昨年6月)。
※ 当初、撮影場所を「体験学習の森」としたのは、正しくありませんでした。記事をご覧いただいた方のご指摘を受け修正しました。ご指摘、ありがとうございました。(5/20)